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建築の納まりとはどのような意味を持ちどのように行うのか

 

新築でもリフォームでも、建築の現場に行くと、職人さんが「納まり」という用語を使っているのを耳にすることがあります。建築業界と関係ない人には、意味がよく理解できず、なんとなく聞き流してしまうかもしれません。

 

しかし、自分の家の建築をしている職人さんと気兼ねなく話せるように、ある程度の建築用語を理解しておき、納まりとはどのような意味なのかを知っていると、良いコミュニケーションを取れるようになります。

 

この記事では、建築業界で使用する納まりとはどのような用語なのかを紹介していきます。

 

納まりとはどのような用語か

大工さんがよく使う納まりとは、ある部材と部材、素材と素材、空間と空間など、2つ以上の部材や素材を接合するときに使用する用語です。2つ以上の素材が接する場所では、どちらを重視するかを選択しなければなりません。

 

これを取り合いといいます。この取り合いがスムーズに行き、接合が見栄えよくできたときに、納まりが良い、取り合いが良いというようになります。

 

しかし、納まりとは繋ぎ目の出来栄えのことと結論づけることはできず、見た目以外のときにも使用します。納まりとは、技術的なことや構造上のことについても使用されるのです。

 

2つの素材をどのような工法で繋ぎ合わせるのか、そのような概念をすべて納め方や、納まりという用語で表現します。

 

納まりとは設計のときから決まっている

整理された簡素な内装に仕上げたいときには、建築で使用する材料だけではなく、エアコンや照明といった電気設備の納まりについても考える必要があります。

 

一例として、電気のコンセントを挙げると、現代社会では、ありとあらゆるものを電気の力で動かすので、部屋の中でどのような家電を使用するかがわかったら、コンセントの数や位置の納まりを考えなければなりません。

 

作業が終わってから、コンセントの数が足りず、延長コードを繋ぎ合わせるようなことになると、建物の外観は美しくても、部屋の中は納まりが悪くなってしまいます。

 

またタコ足配線によって、使用する電気の量が増えて、ひどいときには発火する危険性さえあります。

 

照明についても同じで、デザインの一部として内装のポイントになる照明を取り付けて納まりを良くする場合もありますし、落ち着いた雰囲気を醸し出すために、間接照明を埋め込む建築方法を採用する人もいます。

 

その部屋の性質と使う人の要望によって求められる納まり方は違います。このように納まりとは、設計の図面を書くときにおおかた決まります。

 

納まりとは図面だけでは表せないこともある

納まりとは正しい答えがない言葉でもあります。建築現場では設計の図面をもとに作業を進めていき、部材や素材の取り合い部分は、図面に詳しく書かれており、職人は納め方が見てわかるようになっています。

 

ところが、いざ施工する段階になると、ここの納まりをどうつけるといった会話が生まれます。納まりとは、デザインや見た目では判断できない箇所があるからです。

 

細かい部分は作業を行う職人さんのセンスに任されている場合もあり、接合したあとの使い方なども考慮したうえで、一番良い納まり方を見極める必要があります。

 

職人さんが満足する、すべてがうまくいった納まりとは、見た目も、技術的にも、使い方や住みやすさも、すべてがバランス良く整った状態を意味します。

 

2つ以上の部材が合わさる部分が綺麗に接合されている状態が、納まりが良いといえます。これを実行するために必要なのは、施工する職人さんの技術です。

 

特に木は季節によって伸縮する素材です。そして、木材の種類によっては反りが生じることさえあります。

 

最近は無垢の木材を使う家庭が増えていますが、無垢の木材は自然の木を使用するので、素材によって伸縮率が違ったり、反りが起きやすくなったりするなどの問題があります。工場で造られた合板の木材であれば、そのような心配はほとんどありません。

 

無垢の木材を使いたいときには、木の特徴を知り尽くした職人さんに作業を依頼すれば、納まりが良い状態を実現してくれます。納まりの良さを実現するのは、設計の緻密さと、それを形にする職人さんの技術なのです。

 

良い納まりとは建築物を観察することで学べる

建築現場において納まりが良く仕上げる技術を高めるには、ほかの人が施工した建物を見て、スケッチを描くことが重要です。技術を向上させるには何枚も何枚もスケッチを描く必要があります。

 

これはスポーツでも同じことで、テニスを例に出してみると、ラケットの握り方や使い方は本を読めばおおかた理解できます。しかし、いざ自分でやってみると、頭の中で考えていたようには体が動かないものです。

 

思った通りに体を動かすためには、何度も練習することが欠かせません。

 

野球やゴルフなどでも原則は同じです。つまり繰り返し練習することによって技術を高めるのが一番なのです。

 

また、実際に手を動かし、作業をして覚えていくことも大切ですが、建築の納まり方のスケッチをするときには、建物をよく見るので、この観察も重要な要素になります。

 

スケッチで描くのは、目の前にある誰かが設計した建物なので、勉強のためにも建物の納まりを観察することは重要です。

 

納まりの方法を学ぶ

スケッチをする目的だけではなく、建築物をどのように見せるかという観点から考えても、完成した建物はおおいに参考になります。

 

もちろん、自分が設計するときには、納まり方を同じように真似することはできませんが、各部分の納まり方を参考にしていくことはできます。

 

建築の納まりとは、パターンが少ないので、そのなかでどのような納まりを選ぶかという観点で、完成した建物から勉強するのは効果的です。

 

建築の納まりとは現場によって違います。学校の授業で習うこともなく、実際の作業を通して学び、試行錯誤を繰り返して技術を高めていきます。

 

しかし机の上で勉強する方法もあります。たとえば、設計図書を見ることもひとつの勉強です。建物の設計図は15年間の保管義務があるので、納まりを記した図面は、ほとんど残っています。

 

最近では、設計者が書いた納まり図集なども出版されているので、これらの本から勉強することもできます。